経口中絶薬メフィーゴパックについて

妊娠の継続がむずかしいと感じたとき、
どんな選択をすべきか迷い、不安、葛藤を抱く方は少なくありません。
近年は、外科的な手術のほかに「メフィーゴパック」というお薬による中絶の選択肢が日本でも利用できるようになりました。

欧米では長年広く使われてきた方法であり、
世界的にも標準的な治療として位置づけられています。

メフィーゴパックとは?

メフィーゴパック(MeFeego Pack)とは、
妊娠初期(妊娠9週0日まで)に使用できる薬剤による妊娠中絶
の方法です。

以下の2種類の薬を一定の間隔で服用し、
妊娠の継続を止め、子宮内容を自然に排出させる仕組みです。

  1. ミフェプリストン(Mifepristone)
    ─ 妊娠維持に必要なホルモン(プロゲステロン)の働きを阻害
  2. ミソプロストール(Misoprostol)
    ─ 子宮を収縮させ、内容物を排出する作用

メフィーゴパックの流れ

医療機関によって詳細は異なりますが、一般的には下記のように進みます。

1. 診察・検査

  • 妊娠週数の確認(超音波)
  • 子宮外妊娠の除外
  • 内服が安全に行えるかの全身チェック

2. ミフェプリストンを院内で服用

その後は帰宅し、ご自宅で安静に過ごします。

3. 36〜48時間後にミソプロストールを服用(主に自宅)

子宮の収縮が始まり、
陣痛に似た痛みとともに排出が進みます。

4. 約1〜2週間後の診察

内容物が完全に排出されたか、感染症や出血の異常がないかを確認します。

痛み・出血について

薬剤による中絶は、手術より身体の自然なしくみに近い方法である一方で、
次の症状がみられることがあります。

  • 生理より多い出血
  • 陣痛に似た下腹部の痛み
  • 悪寒・軽度の発熱
  • 吐き気
  • 血の塊が出る

これらは多くの場合「経過として正常」ですが、
出血が急に増えたり、強い痛みが続く場合は早めに医師へご相談ください。

メフィーゴパックが向いている方

  • 身体的負担をできるだけ抑えたい
  • 手術に抵抗がある
  • ご自宅で落ち着いて進めたい
  • 日帰り手術が難しい環境にある

ただし、以下の場合は使用できないことがあります。

  • 妊娠10週以降
  • 大量出血のリスクが高い状態
  • 持病による禁忌
  • 子宮外妊娠が疑われる
  • 感染症の合併

医師が安全性を確認したうえで判断します。

手術との違い

方法メフィーゴパック手術(吸引法)
対応週数〜9週0日まで〜12週ごろ(施設により異なる)
身体の負担少ないが痛み・出血は自宅で経験短時間で処置が完了
精神的負担自宅で進むため落ち着きやすい医療機関での処置が中心
所要時間数日かけて進む数分〜数十分

どちらが良い悪いではなく、
その方の状況・価値観・生活環境によって選択が変わるため、
私たちがいっしょに考え、最適な方法をご提案します。

メフィーゴパックを考える方へ

メフィーゴパックは身体への負担を抑えた方法のひとつですが、最も大切なのは “あなたの安全と心の状態” です。

  • 何を心配しているのか
  • どんな進め方なら安心できるか
  • 家族やパートナーとの関係性
  • 今の生活環境で無理がないか

すべてをふまえて、私たちは寄り添いながらサポートします。

つらい気持ちを抱えたまま一人で決める必要はありません。
不安なことは、いつでもご相談ください。
あなたの心とからだを守るために、医療者としてできる限りの伴走をいたします。

執筆者

Norikoウィメンズヘルスクリニック
院長 寺田 倫子

2007年札幌医科大学卒業。札幌医科大学病院、砂川市立病院、NTT東日本札幌病院、市立釧路総合病院、東豊病院などでの勤務を経て、Norikoウィメンズヘルスクリニックを開院。産婦人科専門医、母体保護指定医、臨床遺伝専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、腹腔鏡技術認定医、子宮鏡技術認定医、医学博士。