不妊治療基本方針と内容 ~ステップアップ方式~
ステップ1 〔タイミング療法〕
ご夫婦ともに大きな異常がない場合は、タイミング療法から始めます。
超音波検査による卵胞計測と尿中LH測定から排卵日をきちんと特定し、夫婦生活のタイミングをとっていただきます。 排卵誘発剤を使用することもあります。(5~6周期)
ステップ2 〔人工授精〕
人工授精をご希望される場合は、当院から徒歩1〜2分のさっぽろARTクリニックを紹介しております。
タイミング療法を行っていても妊娠されなかった方は、人工授精(AIH)へステップアップします。タイミング療法と同様に排卵日を特定し、精液中から運動良好精子を選別濃縮し、子宮内に注入する方法です。精液検査で乏精子症や精子無力症と診断された場合は、最初からこの人工授精から始めることもあります。
精液に含まれる受精阻害物質を除去し、さらに運動良好精子を選別・濃縮した後、その精子を排卵直前の女性の子宮腔内に直接注入します。精液検査で精子数が少ない(乏精子症)精子運動率が低い(精子無力症)と診断された場合に適応となります。排卵誘発剤の併用が妊娠率を高めます。
体外受精などをご希望される場合は他院へ紹介しております。
ステップ3 〔体外受精・顕微授精〕
人工授精を5~6周期行っても妊娠されなかった方、人工授精を5~6周期行っても妊娠されなかった方、子宮卵管造影検査で両側卵管閉塞と診断された方、高度男性不妊の方は、体外受精(IVF-ET)の適応となります。 また、体外受精を行っても受精しなかった方(受精障害)や精液中に運動精子がほとんど認められない方の場合には顕微授精(ICSI)が適応となります。 このようにステップアップ方式での治療が基本となりますが、不妊検査の結果、女性の年齢によってはステップ2やステップ3から始めることも必要になります。
●体外授精
超音波で観察しながら、経膣的に卵胞に針を通して卵胞液を吸引し、その液に卵がないか探します。採卵した卵子に、採取した精液は、洗浄・濃縮して運動良好な成熟精子を集め、一定の濃度に調整した後に、卵子を入れた培養液に入れて受精させます。これを「媒精」といいます。必ずしもすべての卵子が受精するわけではなく、一般的に受精率は7~9割程度です。
胚の分割速度が異なる場合もありますが、およそ次のような経過をたどります。
D1 | 受精確認(16~18時間経過後) |
D2 | 分割確認(42~48時間経過後)・初期胚移植 |
D3 | 分割確認(65~70時間経過後)・初期胚移植 |
D4 | 分割確認・桑実胚移植 |
D5 | 分割確認・胚盤胞移植 |
●顕微授精
顕微授精法の治療スケジュールは、通常の体外受精・胚移植法と全く変わりがありません。ただ「媒精」の方法が異なるだけです。それは1匹の精子を直接卵子の中に注入する卵細胞質内精子注入法(ICSI)という方法です。非常に細いガラス針で精子を吸引し、卵子にダメージを与えないように注入します。体外受精を行っても受精卵ができなかった方や、精液中に運動精子がほとんど認められない重症男性不妊の方が適応となります。