多毛症

多毛症とは?

女性の悩みのひとつの多毛ですが、多毛症とは、軟毛の硬毛化(やわらかい毛が硬くなること)のことをいうのであり、毛の数が増えることではありません。女性や小児にみられる男性型の発毛状態をいいます。この男性型多毛症の90%はPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)と特発性多毛症が原因です。
 

どうして硬くなるのかな?

女性でも血液中に男性ホルモン(アンドロゲン)が過剰分泌すると硬毛化し、本来柔らかくて目立たない部位が毛深く見えるようになります。副腎皮質ホルモンや成長ホルモンの過剰によって起こることもあります。男性ホルモンが異常高値を示す場合にまれに卵巣がんや副腎がんの可能性もありますので、多毛症を認める場合には医療機関を受診して、血液中の男性ホルモンを測定されることをお勧めします。
 

男性ホルモン(アンドロゲン)って何?

アンドロゲンとは、男性化作用を持つホルモンの総称です。思春期以降に、精巣、卵巣、副腎から分泌されます。女性にも男性ホルモンは分泌されていて80%は卵巣から分泌されます。この男性ホルモンが少量の場合は腋毛、陰毛の硬毛化がみられ(これは正常型ですね)、多量の場合は、髭、髪、胸毛、背中、四肢の毛の硬毛化がみられます。

例えば女性の陰毛は通常逆三角形に生え、おなかの毛は目立ちませんが、男性ホルモンが過剰分泌すると、本来目立たないおなかの毛が硬毛化し、おへその下まで続くようなピラミッド状の男性型発毛を示し濃い毛に悩むことになります。
 

ところでPCOSって何?

卵巣が多嚢胞化・腫大し、月経異常、無排卵を示し不妊の原因となる症候群です。様々な症状があり、このひとつに多毛もあります。原因は、黄体化ホルモン(排卵を指示するホルモン)が過剰分泌し男性ホルモンの過剰分泌を引き起こすと考えられています。ただし日本人で多毛を示すことは多くはありません。
 

治療は?

もう生じてしまった硬毛は、電気凝固、脱毛クリーム、脱色法、レーザー脱毛などの美容的脱毛療法しか方法はありません。新たな硬毛化を抑えるためには、薬剤、外科的療法によりますが全身的多毛治療としては、低用量ピルと利尿薬のスピロノラクトンの薬剤療法をお勧めします。

低用量ピルは卵巣からの男性ホルモン分泌を抑えて、多毛症を改善させます。スピロノラクトンは、アンドロゲンレセプターをブロックすることと卵巣からの男性ホルモン分泌を減少させることで多毛症を改善させます。この薬は高血圧の治療に用いられますが、正常な血圧に影響を及ぼすことは通常ありません。副作用として不正出血や月経回数が多くなることですが、低用量ピルと併用することでコントロールできます。ただし臨床的効果が認められるまでには6か月は必要です。PCOSが原因の多毛症も同じく治療できますのでご安心を。